第183 通常国会 2013/1/28~2013/6/26 日付:2013-07-14 |
1)原発事故賠償問題
原発事故被害者の住宅再建費用に賠償額が及ばず「家が建てられない」との声を紹介し、「被害の全面賠償、生活再建に全力を挙げよ」と追及。茂木経産大臣は「現在の賠償基準が被害者の実態を踏まえたものか再検討し、賠償基準に反映させたい」と答弁。(5月31日経産委員会)
2)東電任せの事故収束対策の問題点を追及
福島第一原発の地下貯水槽から放射能汚染水が大量に流出している問題で、事故収束・安全対策を「応急措置」のままにしてきた東電任せの対策を批判、国が責任を持って対処するよう要求。茂木経産大臣は「(貯水槽)1号から7号まですべて、地上のタンクに移送するよう指示した」と述べ、今後は地下貯水槽を使わない方針を明らかにし、「国としてやるべきことを前面にたって対応する」「安全第一に取り組む」と答弁。(4月10日経産委員会)
5月20日の東電福島第1原発現地調査を踏まえ追及。原子炉注水ポンプがトラックの荷台にすえつけられ、汚染水処理設備の配管に信頼性の低い「耐圧ホース」が使われている実態を指摘した。
原子力規制庁は、注水ポンプについて「地べたに置くよりもトラックに載せたほうが耐震性は有利」などと答弁。「耐圧ホース」についても、これまで15件の汚染水漏れや植物による破損などのトラブルがあったことを認め「基本的にはポリエチレン管に取り換える」としながらも部分的にまだ使用していることを明らかにした。
仮設対応で済ませる東電のコスト優先の姿勢が厳しく問われている。国が責任を持って対処する必要がある。茂木経産大臣は「東電任せにせず、国が前面に出るべき所では前面に出て進めたい」と答弁した。
さらに、国と東電が地下水バイパスをつくって地下水を海に放出する計画に漁民が強く反対していることを取り上げ、中止を求めたが、茂木大臣は「バイパスは必要だと思う」と、強行する姿勢を示した。(5月22日経産委員会)
3)新規制基準の問題点を追及
原発再稼働の根拠とされる新規制基準が、放射性物質を外に漏らすことを前提にした過酷事故対策であることを追及。
安倍首相が再稼働の前提としている新基準は、炉心溶融の過酷事故が起こることを前提に格納容器が壊れないよう放射性物質を外に排気することになっている。住民は放射能被害をがまんしろということになる。放射性物質を外に漏らすことを前提にした過酷事故対策はおかしいと告発。
安倍首相は「何重もの安全対策を取る」と述べたが、これは新たな安全神話をつくるものだと批判。(4月5日予算委員会)
4)原発輸出批判
「成長戦略」に位置づけられている「インフラシステム輸出戦略」では「原発や高速鉄道等、熾烈な競争を勝ち抜くべき個別案件について、官民一体で取り組み、政府全体として支援していく」とある。そこでインフラシステム輸出のなかで、原子力分野の2020年における海外受注額は、どのように推計しているのかを質問。経産省は2010年の原発輸出実績0.3兆円を2020年には2兆円に増やすと初めて明らかにした。
国内では原発再稼動のために「政府一丸となって」地元対策を行い、海外に向けては原発輸出を「官民一体で取り組み、政府全体として支援していく」という。政府が原発にてこ入れすることが、電源構成において原発を優先することになり、結果として9電力会社と原子炉メーカーを優遇することにより、電力システム改革そのものをゆがめることになるのではないかと追及。茂木経産大臣は「原発の輸出については世界の原子力安全の向上や原子力の平和利用に貢献することは日本の責務」と、あくまでも原発に固執する姿勢を示した。(6月12日経産委員会)
5)破たんしている核燃料サイクルの中止を求める論戦
内閣府は、再処理で発生するプルトニウムを44トン(国内9トン、海外35トン)保有していることを明らかにした。プルトニウムは核兵器の原料となるもので非核国では日本が世界最大の保有量となっており「大量のプルトニウムが生じる一方で、その利用計画をまともに示せない。『余剰プルトニウムを持たない』という原則から逸脱している」と追及。茂木経産大臣は再処理工場も高速増殖炉も頓挫したままなのに、「プルサーマル計画を着実に進めていきたい」「有効利用の観点から必要だ」と繰り返した。
英国が再処理工場を閉鎖するなど核燃料サイクルからの撤退が世界の流れとなっている。福島原発事故も踏まえ中止を強く求めた。(3月22日経産委員会)
6)電力システム改革の問題点を追及
電力供給体制の見直しなどを盛り込んだ電気事業法改定案について反対討論。
東電を国費で支え、原発再稼働と電気代値上げで賠償をまかなう仕組みを温存している。安定供給を危うくする規制緩和を進め、電力独占による「ガリバー支配」を維持しかねない。日米の「原発利益共同体」のため原発再稼働と輸出をすすめるのが安倍内閣だ。60年にわたる地域独占、民営の発送電一貫体制という「ガリバー支配」を改革し、「原発ゼロ」に向けて電力民主化を進めるべきだと指摘した。
賛成討論で民主党は「民主党の政策を受け継ぎ、法案化した」と持ち上げ、維新は「電力のベストミックスを一刻も早く確立すべき」と原発をエネルギー政策の柱にするよう主張。みんなは「競争なき自由化」と批判し、米国でも破たんした競争促進・規制緩和を主張した。(6月13日本会議)
「東電改革」との関係で、東電が昨年11月、国に新たな財政支援策を求めていることを指摘。4月に安倍首相が「国が一歩前に出る」と東電首脳陣にのべたのは、資金面の支援をさらに考えるということかと質問。茂木大臣は「国が果たすべき責任を果たすという趣旨だ」と答弁。東電を国費で支え、原発再稼働、電気代値上げで原資をまかなう原賠支援機構のスキームを見直し、東電の経営責任、株主責任やメガバンクの貸し手責任を問うべきだ。とりわけ、金融機関が社債や借入金の利息で3・11以後2355億円も受け取っている。メガバンクに債権放棄を求めるなど、東電利害関係者に責任と負担を求める東電改革が必要だと指摘した。(5月31日経産委員会)
発送電分離改革について質問。九つの電力会社の発電と送電一体の独占支配を打ち破る改革が必要。民営の発電送電一貫の地域独占体制は主要国では日本以外に例がなく、2002年の電気事業制度改革以降、新規事業者がほとんど参入できていない。発送電一貫体制を中心とした地域独占の枠組みを断ち切ることなしに、再生エネルギーの普及や需要家(使用者)の選択肢の拡大はすすまないと指摘。茂木経産大臣が5月31日の答弁で、電力会社の広域系統運用を拡大した後に、送電部門の中立化を図ると答弁したことを取り上げ、発送電の分離が行われてこそ、事業者参入の自由化が促され、小売りの自由化にもつながると質問。
茂木大臣は「電力システム改革は2018年の発送電分離で終わるわけではない」と説明したのに対し、「国が前面に出て発送電分離体制を整備し、ガリバーのように巨人化した電力会社の地域支配を打ち破る電力改革の取り組みが必要だ」と主張した。(6月5日経産委員会)
7)省エネ基準見直しについて。「高気密・高断熱」を基本とする省エネ住宅基準では、木材伝統工法による土壁・しっくいによる湿度調整や風通しなど日本の気候や風土を考えた家作りの取り組みが阻害されかねないとして「亜熱帯を含む温暖な日本の風土に見合った省エネ基準をつくる必要がある」と要望。茂木経産大臣は「木材が耐熱に優れている面もある。伝統的な日本の建築に柔軟な対応をしていきたい」と答弁。(3月27日経産委員会)
また、エネルギーを多く使用する工場等に対し、エネルギーの使用合理化を促すための定期報告の中身を経済産業省が簡素化しようとしていた問題について、簡素化方針の撤回を求めた。(4月3日経産委員会)