第190 通常国会 2016/1/4~2016/6/1 日付:2016-06-20 |
(1)衆院選挙制度改革
1)衆院定数削減に根拠なし/小選挙区制は廃止を(2月29日、予算委員会)
衆院議員の定数を削減する根拠が何もない。国民の参政権を侵害するもの。民意をゆがめる小選挙区制は廃止し、民意を反映した選挙制度への抜本改革を提案した。
主要各国の国会議員数(下院)をみても、人口10万人当たり1人程度であること、日本でも男子普通選挙実施時の定数466の根拠が「人口12万人につき議員1人を配当する」(若槻礼次郎内務大臣、提案理由説明)と定められていた。現在の衆院議員の定数が日本の選挙制度の歴史からみても多いとはいえない。
同パネルで、1890年の高額納税者に限った制限選挙実施時から1925年の男子普通選挙時まで、人口10万人当たり衆院議員数は0.8人前後で推移していた。その後は人口も増え、選挙権拡大で有権者数が増えたにもかかわらず議員定数が減らされたため、現在では人口10万人当たりの衆院議員数は0.4人を切っている。
1月に提出された衆院選挙制度調査会の答申も、議員定数について「国際比較や過去の経緯などからすると多いとはいえず、削減する積極的な理由や理論的根拠は見出しがたい」と結論づけている。
調査会の結論は、定数を削減する根拠はないということだ。さらに、普通選挙・女性参政権へと拡大してきたのは、国民のたゆまぬ運動があったからだ。
安倍晋三首相は、選挙権獲得の歴史を踏まえて、「民主主義を支える重要な権利」と述べ、議員定数削減の根拠がないことを認めた。そのうえで、「消費税を引き上げていくことにかんがみ、われわれも『身を切る改革』をしなければならない」と弁明した。
そもそも定数削減は民主党・野田政権時代に、「国民の皆さんに消費税増税をお願いする以上、政治家も『身を切る改革』が必要だ」として、消費税増税を国民に押し付けることと一体で持ち出されたものだ。河野洋平元衆院議長が、そのことについて「定数削減で切られるのは、有権者の権利だ」(「読売」14日付)と批判している。消費税増税を押し付けた上に、国民・有権者の権利を侵害する議員定数削減など、二重に許しがたい。
国民の声が、国会に反映しないのは、小選挙区制によって4割台の得票で7割台の議席を得て、民意をゆがめている。小選挙制はきっぱりと廃止して、民意が反映する選挙区制度への抜本的改革が強く求められる。
2)民意写す選挙制度に/比例中心への改革を(3月18日、倫理選挙特別委員会)
衆院選挙制度に小選挙区制と政党助成金を導入した「政治改革」を総括し、いまこそ、国民の民意を正確に反映する比例代表中心の選挙制度への抜本改革と政党助成制度の廃止を実現すべきだ。
小選挙区制について、総務省の選挙部長との質疑で
[1]この4回の衆院総選挙において、第1党が4割台の得票で7~8割の議席を占めている。
[2]2014年総選挙の死票率は約48%、死票が半数を超える小選挙区は133選挙区。
[3]1票の格差是正のたびに、小選挙区が域内で分割される市町村が増え、2013年区割り改定後で、88市区町に上る―――ことを確認。
小選挙区制は民意を著しくゆがめ「虚構の多数」や大量の死票を生み出し、投票権の平等という憲法の原則とは両立できない制度だ。
高市早苗総務大臣が衆院選挙制度の抜本改革をめざす「中選挙区議連」の発起人だった。このことに見解をもとめると、高市大臣は「今は閣僚としての答弁しかできない」としつつも「小選挙区制には少数意見が反映しにくいという問題点が指摘されている」と述べた。
また、政党助成金についても、総務省選挙部長との質疑で
[1]この20年間で約6631億円もの税金、36の政党が山分けした。
[2]各党の依存率が高い―――ことを確認。
制度導入後、政党は離合集散を繰り返し、財政を労せず税金頼みしていることで、カネに対する感覚がマヒし、増税を押し付けられた庶民の痛みがわからなくなっている。
税金頼みの政党を生み出す政党助成制度、「虚構の多数」をつくりだす小選挙区制があいまって、「政党の堕落」と「政治家の劣化」をまねている。
3)民意反映の選挙制度こそ/衆院10減審議(4月25日、倫理選挙特別委員会)
現行の衆院選挙制度を温存したまま定数を10削減する選挙制度関連法案の自公案と民進案が、衆院政治倫理・選挙特別委員会で実質審議入り。両案は国民の声を聞く機会も全党協議もなしに提出された。主権者・国民の代表の選び方、国民の参政権のあり方を決める選挙制度について十分な議論が必要だ。
両案が非公開の衆院選挙制度調査会の答申に基づいて提出され、週内にも衆院採決に持ち込む動きがある。私は地方・中央の公聴会の開催を提案した。
自公案提出者も民進案提出者も、選挙制度が民主主義の根幹と認め、議論が必要と述べながら、過去の各党協議で結論が出なかったから調査会に諮問し、答申が出されたと今回の提出の経緯を説明し、国民の声を聞く場を持つことを否定した。
小選挙区制が生む民意と議席のかいりがある。現行選挙制度の功罪を広く評価・検証するとした2013年6月の全党確認事項の到達点に立ち戻るべきだ。さらに、全党確認事項で見直しを協議するとしていた「小選挙区の民意集約機能の緩和」についてただすと、両案の提出者は「集約機能が行き過ぎている傾向はある」(公明党の北側一雄衆院議員)、「たしかに民意が過度に集約され過ぎる」(民進党の逢坂誠二衆院議員)と認めた。
いま国民からは、安保法制などをめぐり『(政治は)なぜ国民多数の声を反映しないのか』『主権者の声を聞け』との声があがっている。選挙制度を考える基本原則は国民の多様な民意をできる限り正確に反映することにあり、民意が届く制度をつくる真剣な議論こそ必要だ。
4)民意削る定数削減案を可決/“小選挙区制の廃止こそ必要”と共産党は反対(4月27日、倫理選挙特別委員会)
小選挙区制を温存したまま衆院定数を10削減(小選挙区6減、比例4減)する衆院選挙制度関連法案の自公両党案と民進党案が、衆院政治倫理・選挙特別委員会で採決され、日本共産党が反対するなか、自公案が両党とおおさか維新の賛成で可決。
採決に先立つ質疑で穀田恵二議員は、両案の提出者をただす中で定数削減に道理がないことを徹底して浮き彫りにし、両案が温存する小選挙区制の廃止こそ必要だと強調した。
私が反対討論▼参政権にかかわる重大法案を国民的な議論もなしにわずか3日の委員会質疑で採決した▼両案の定数10減に根拠がない▼将来にわたって小選挙区制を温存する仕組みが盛り込まれている――民意を反映する選挙制度への抜本的改革を主張した。
5)定数削減は許されない/選挙制度関連法案が衆院通過(4月28日、衆院本会議)
小選挙区制を温存したまま衆院定数を10削減する衆院選挙制度関連法案が、衆院本会議で採決され、自公案が自民・公明・おおさか維新の賛成で可決、民進案は否決された。日本共産党は、両案に反対。私が反対討論に。
今回の法案は、提案者が制度発足以来の「大改革」と言うが、今週3日間わずか7時間余りの委員会審議で採決。国民の参政権の在り方を決める大事な法案を、こんな乱暴なやり方で通すとは言語道断。
法案の2つの柱は「定数削減」「小選挙区制の温存」。
定数削減については、根拠がないことがますます明確となった。調査会答申は現在の衆院定数が多いとは言えず「根拠は見出しがたい」としている。さらに、審議の中で、提出者も「議員が多いとは思っていない」「(人口が半分だった)90年前の水準に戻ってしまう」、定数削減で国会の政府監視機能が低下するという弊害を認めている。
また、自民党提案者が「身を切る改革=定数削減との考え方にくみするべきではない。国民の声を代弁する貴重な議席は国会議員のものではなく、国民のものだ」と強調している。声高に叫ぶ「身を切る改革」が、増税を押し付けるためのすり替えで、道理がないものだ。根拠もなく定数削減することは許されない。
さらに、今回の法案で小選挙区制を温存することがあらわになった。自動的に格差是正する仕組みを盛り込んでおり、長期的に現行制度を維持できる設計であることを、提案者も認めている。現行小選挙区制は、得票率と獲得議席に著しいかい離をうみだし、死票が半数に上る。
民意の反映を著しくゆがめる小選挙区制は廃止し、民意を反映する選挙制度へ抜本的に改革すべきだ。
(2)公職選挙法改正
1)旧住所での投票可能に/周知徹底を/公選法改正案可決(1月20日、倫理選挙特別委員会)
夏の参院選から18歳選挙権が適用となることに伴い、新たな有権者が進学・就職の転居によって、投票できない可能性があると問題になっていたが、転居前の旧住所に3カ月以上居住していれば、旧住所で投票を可能とする公職選挙法改正案を全会一致で可決した。
憲法は主権者・国民の参政権を保障しており、投票機会を保障するのは当然のこと、必要な措置だ。また、この改正で投票可能になった人は、旧住所での投票となるため、手続きに時間がかかる不在者投票の周知徹底が必要だ。
今回の改正後も投票できない事例として、住民票を異動させずに進学した大学生等の投票権について質問。
総務省は、住民票を異動させていない大学生等が63%に上ることを紹介し、適正に住民票を異動するよう周知を図っていると述べた。
国政選挙の場合、公選法は、18歳以上(今年の参院選から)の日本国民が選挙権を有するとしており、一つの市町村に3カ月以上居住などの要件は規定していない。
選挙権を有しているにもかかわらず、権利行使が認められない事態を解消する必要がある。全党で議論をすすめることを呼びかけた。
提案者の逢沢一郎氏(自民)は「第1会派の責任者として、指摘をしっかりと受け止めておきたい」と答えた。
2)公選法改正案が可決/選挙権行使の保障を(3月30日、倫理選挙特別委員会)
従来の洋上投票制度は、乗船する日本人船員が3人未満の場合や、外国籍船舶に乗船している日本人船員は利用できません。改正案は、これらの船員にも洋上投票できるようにするもの。不正防止のための厳格な手続きに変更があるのかと質問。
提案者の逢坂誠二議員(民進)は「現行の施行令をベースにして定められる」「投票の公正性や投票の秘密が十分に確保されるよう適切に対処する必要がある」とし、今回は外洋航行中の特殊な環境下での船員の投票権を保障するための「きわめて例外的なもの」と答弁。
選挙権は国民の政治参加を保障し、国民主権・民主主義の根幹をなすものであり、不正があれば選挙の正当性が失われることになり、選挙の基本原則(普通選挙・平等選挙・秘密選挙・直接選挙)が揺らいではならない。選挙権行使の保障と選挙の公正性確保は同時に追求しなければならない。
また、障害者や高齢者が投票所に行きにくい問題では、投票所に行けない人を訪問する巡回投票制度の導入を提案。地方議員選挙のビラ頒布の解禁を求めた。
提案者の黒岩宇洋議員(民進)は「速やかに実現するよう努力していく」と答えた。
委員会で採択の後、31日の衆院本会議で洋上投票の対象拡大を盛り込んだ公職選挙法改正案が全会一致で可決した。