第192 臨時国会 2016/9/26〜2016/12/17 日付:2016-10-12 |
政府は、2020年以降の地球温暖化対策の新たな国際枠組みとなる「パリ協定」承認案を閣議決定し10月11日、国会に提出しました。この協定は、アメリカなど70か国以上が批准を済ませ発行条件を満たし、11月4日の発行が決まっていますが、日本は出遅れた形です。
この日、衆院議院運営委員会理事会では、「パリ協定」承認案を、参院で先に審議することが決まりましたが、以下の点を指摘し、参院先議は責任転嫁だと、政府・与党の姿勢を批判した。
●政府は「(パリ協定の早期批准は)国会の調整次第」などと言い、山本環境大臣は「国会審議の場で荒業があってもいいのではないか」と発言。自民党の会合では、COP22が開かれる来月7日までの協定締結めざして国会承認を急ぐ方針を確認したと報道している。
政府・与党は「国会での速やかな審議、承認を」というが、そもそもパリ協定発効の見通しを誤った政府の責任を、国会手続きに問題があるかのような責任転嫁は認められない。
●「早く批准しないと協定の詳細ルールづくりに参加できない」と言われているが、政府は「パリ協定の詳細ルールづくりは、これまで日本も参加し、議論してきた気候変動枠組み条約の下の特別作業部会で行われるので、日本の意向も反映させることができる」と述べている。
国会承認手続きの遅れが問題であるかのような話は通らない。
●そもそも政府がこれまで国会にパリ協定を提出しなかったことこそ問題だ。日本政府はパリ協定について、米中やインド等の批准待ちという様子見の姿勢で対応。
そのため、今年の通常国会には国内の担保法である地球温暖化対策推進法の改正案は提出したのに、パリ協定は提出しなかった。臨時国会が始まってもパリ協定を国会提出せず、所信表明演説ではパリ協定には全く触れることがなかった。
批准の遅れに対する政府の責任は明らかだ。
●このように政府がパリ協定の国会提出を先延ばししたのは、TPP協定の早期承認を最優先課題にしていたからだ。
また、政府がパリ協定批准について様子見だった背景には、財界の慎重姿勢がある。日本経団連は「パリ協定の締結については、京都議定書の教訓を踏まえ、各国の対応を慎重に見極める必要がある」と要求していた(京都議定書では、米国は議定書の採択に合意したが批准せず離脱。日本は“不平等”を理由に第二約束期間から離脱した)。
●日本政府は、パリ協定合意の場であるCOP21で「2030年までに13年比で26%削減」(90年比で約18%)という低い削減目標を提出する一方で、発効要件でも排出量の55%以上を提起するなど、温暖化対策の足を引っ張る役割を果たした。
しかも国内の担保法である地球温暖化対策推進法改正案は、パリ協定の重要な趣旨が盛り込まれず、原発・石炭火力依存のエネルギー政策を基盤にしたものだ。
このような政府の後ろ向きの姿勢について、しっかりと国会で審議すべきだ。
●憲法61条(条約承認についての衆議院の優越)の規定に基づき、パリ協定は衆議院から審議すべきだ。
臨時国会の会期は、審議する案件を考慮して設定されるはず。審議促進を理由に参議院先議を持ち出すのは筋違いだ。